メッセージ
プログラムコーディネーター 長坂 徹也東北大学大学院工学研究科 研究科長 金属フロンティア工学専攻・教授 |
材料科学の東北大学
東北大学は我が国を代表する総合大学のひとつですが、その中でも「材料科学」と「物理」が非常に強い大学として世界的に知られています。これらの分野では、常に物質・材料の新しい機能、プロセス、デバイス、特性の開発が求められており、非常に競争が激しい研究分野です。そのため、物質・材料開発における日本の世界的優位性を維持し、発展させるために、東北大学では世界レベルの多数の研究者が多大な貢献を果たしてきました。その多くは、特定の研究領域で最先端の知見を更に深化させて目標に迫る、まるでレーザービームのような「線」のタイプの人財によるものでした。このような鋭い志向性を持つ人財は、今後も弛まず育成していかなければなりません。
「面」、「立体」タイプの人財
一方、最近の材料開発分野はニーズの変化が著しく、前述の「線」のタイプ研究者に加えて、新たなタイプの人財育成が強く求められています。「線」で物を考えると、その線上では正解であっても、全体としては正解とは言えない研究結果を生み出す恐れがあります。例えば、機能を追求するあまり、耐食性や廃棄時の安全面、コストや材料のサプライチェーンまで考えが及ばない場合がしばしば見られます。これに対して、いま注目している物質が置かれる状況を俯瞰的に把握し、迅速かつ適格に社会のニーズに対応できる、「面」あるいは「立体」タイプのリーダー的人財が必要です。このような観点から、本プログラムでは、基礎のしっかりした、広い視野でダイナミックに物質・材料分野に対応できる物質リーダーを育成するために、本学が誇る英知を結集しました。物質・材料科学分野を中心に、約60名のコア教員、約15名の専任教員・スタッフ、更に准教授、助教クラスの若手の約100名の教員が教育および研究指導を行います。参画教員の専門分野は、物質・材料科学のほぼ全分野をカバーしていますが、中でも東北大学の世界的強みであるスピントロニクスや固体物性、ベースメタル工学の精鋭が揃っています。
マルチディメンジョン(MD)とは
マルチディメンジョン物質理工学リーダー養成プログラムの育成人財目標は、多角的な視点や手法で物質・材料を理解し、新しい物質デザイン思想を現実化するだけの広く確かな基礎知識と幅の広い研究経験を有する物質リーダーです。このプログラムで言う「マルチディメンジョン(MD)」とは、機能(発光、触媒、伝導、磁力等)、特性(強度、効率、限界値等)、プロセス(原料、製法、デバイス化等)、環境調和性(低炭素、高リサイクル性等)、経済性(コスト、需給バランス等)、安全、評価等に関するマルチプルな軸・次元で物質を幅広く俯瞰的に捉えることを意味します。このような能力を有する人財を養成するために、基礎と応用を担う理学と工学の2つのコア、数学、化学、物理の基礎基盤に対して「物質科学」の横串を入れ、更に薬学、環境科学、経済学、哲学等人文・社会科学を教育要素として配した総合的なMD教育を行い、主に産業界で即戦力として活躍できる人財育成を目指します。
MDプログラムは皆さんを待っています
世界最先端を誇る東北大学の物質・材料グループにおいては、既に様々な国際交流、英語講義、国際・企業インターンシップが実施されています。本プログラムでは、十分な実績に基づいた基礎教育カリキュラムに加え、これらの教育インフラを更に高度化したグローバル教育法を用意しています。このようなプログラムに対して、広い角度から将来のリーダー候補生を国内外から積極的に受け入れます。このような環境に身を置くことで、自然にグローバルセンスが醸成されていくと期待しています。
あまり熱を入れて説明すると、学生さん達は腰が引けてしまうかもしれません。しかし決して無理を強いるプログラムではありません。特定領域のサイエンスを深化させようとするあまり、開発した物質・材料の製品イメージが希薄になりがちなのは、ある意味、物質・材料科学の弱点とも言えます。MDプログラムでは、このような弱点を克服するために、一般学生が受ける教育に対して、マルチプルかつグローバルなセンスを身に付けるトレーニングを少し積み増そうとするものです。皆さんの5年後の姿を自ら想像しながら、多くの俊英がMDプログラムの門を叩くことを願ってやみません。
※本プログラムのロゴマークは、MDを模ったものです