プログラム概要
プログラムの概要
日進月歩で新しい機能、プロセス、デバイス、特性が求められる物質・材料分野において、世界的な視野で日本の優位性を維持し、発展させるためには、多角的な視点や手法で物質・材料を理解することで常に俯瞰的にその対象物質が置かれる状況を把握し、迅速かつ適格に社会のニーズに対応できるリーダーが不可欠である。この観点から、限られた軸で物質・材料を評価・解析する傾向が強い現在の大学院教育の弱点を補う新しい大学院プログラムの必要性を強く感じている。本学位プログラムでは、基礎のしっかりした、広い視野でダイナミックに物質・材料分野に対応できる物質リーダーを育成するために、本学が誇る英知を結集する。育成人財目標は、マルチディメンジョン物質デザイン思想を有し、それを実行するだけの広く確かな基礎知識と幅の広い研究経験を有する物質リーダーである。このプログラムで言う「マルチディメンジョン」とは、機能(発光、触媒、伝導、磁力等)、特性(強度、効率、限界値等)、プロセス(原料、製法、デバイス化等)、環境調和性(低炭素、高リサイクル性等)、経済性(コスト、需給バランス等)、安全、評価等に関するマルチプルな軸・次元で物質を幅広く俯瞰的に捉えることを意味する。このような能力を有する人財を養成するために、基礎と応用を担う理学と工学の2つのコア、数学、化学、物理の基礎基盤に対して「物質科学」の横串を入れ、更に薬学、環境科学、経済学、哲学等人文・社会科学を教育要素として配した総合的な教育を行う。
プログラムの特色
広くしっかりした基礎を有する人材は幅広い対応能力を持つことを原則に、本学位プログラムでは、物質・材料科学に関する基礎、特に数学、物理、化学、工学、社会学の基礎を修得させた上で、マルチプルな軸次元で物質を多視角的に捉える能力を養成させる点が一番の特徴である。もう一つの特徴的な取り組みは、産学連携組織を介した具体的企業とのペアリングである。プログラム入学後、履修生は指導教員および新設の「マルチディメンジョン物質理工学教育研究センター」委員(プログラム参画教員)および既存組織を利活用して新設する産学連携プラットホームの企業委員との協議によって、5年一貫の博士論文研究テーマおよび連携企業を決定し、「履修生・指導教員・企業委員」の体制で博士論文研究を進めるものである。連携企業は、履修生の長期インターンシップの受け入れ先としても機能する。また、プログラム内インターンシップ制度も本提案の大きな特徴でもある。履修生は、所属する研究室とは異なる専攻の研究室において、3ヶ月以上の期間で異なる研究課題と取り組み、その課題についてのオーバービューと成果発表を行うことで、幅広い知識、研究能力、俯瞰力、独創性を磨く。異なる研究・開発カルチャーへの理解と経験は、幅広い俯瞰力を有する物質リーダーに不可欠な要素である。なお、プログラム内インターンシップ先研究室の指導教員は、前述の企業とのペアリングチームに参画する。さらに、本学位プログラムに選抜された学生がグローバルに活躍するために、海外留学、国際共同研究を充実する。国際社会で通用する英語コミュニケーション能力を養うため、グローバルコミュニケーションスキルアップ研修を開設して、これを必修化する。
修了生の質を保証する制度として、修士課程2年次進学前後に最初の能力認定試験(Qualifying Examination)を義務付け、博士後期課程1 年目に博士論文研究課題、およびプログラム内インターンシップ先研究室での研究課題の2テーマに関するオーバービューを行い、学生が行う研究の質を客観的に保証する。さらに博士論文審査には、従来の専門審査に加えて、外国研究者や企業の審査員も加えた総合能力認定試験を行うことで、幅広い視角と深い知識の両方を有する物質リーダーを育成する。
本学位プログラムは、学位として所属する部局の博士を授与するが、これまでの大学院教育と大きく異なり、ひとつの分野の深い知見と経験を持ちつつ、物質科学に関する俯瞰的・総合的知識を教育するものであるから、博士課程リーディングプログラム(マルチディメンジョン物質理工学リーダー養成プログラム)を修了していることを付記し、修了生の幅広い知識、能力を保証する。
プログラムの優位性
世界最先端を誇る本学物質・材料グループにおいては、様々な英語講義、国際・企業インターンシップのプログラムが用意されており、十分な実績に基づいた基礎教育を行えることが本プログラムの基礎教育における優位性である。本プログラムでは、これらの教育インフラを更に高度化して最大限活用する。また、学部生の導入教育を充実させ、広い角度から将来のリーダー候補生を選抜してプログラムに組み入れると共に、豊富な国際ネットワークを活用して海外からも優秀な人財を積極的に確保する。また、厳選した履修生に対する教育、研究指導では、本学がこれまで培ってきた共同研究体制を発展させた産学連携プラットホームを設け、これを企業インターンシップ等に最大限利活用し、研究面のみならず、企業組織の運営管理方法の講義等、教育面でも産学官連携を強力に進めると共に、修了生のキャリアパス確保のために機能させる。なお、全学的には、東北大学学位プログラム推進機構 リーディングプログラム部門(2015年にリーディングプログラム推進機構より改組)を設置し、全学的視点からリーディング学位認定を行うなどの推進体制を構築している。
学位プログラムの概念図
プログラムに参画している研究科・専攻
文学研究科 |
文化科学専攻(H31年4月より総合人間学専攻) |
理学研究科 |
物理学専攻、化学専攻、数学専攻、天文学専攻 |
工学研究科 |
金属フロンティア工学専攻、知能デバイス材料学専攻、材料システム工学専攻、応用化学専攻、機械機能創成専攻、電子工学専攻、応用物理学専攻 |
情報科学研究科 |
システム情報科学専攻 |
環境科学研究科 |
先端環境創成学専攻、先進社会環境学専攻 |
薬学研究科 |
分子薬科学専攻 |
※応用物理学専攻と分子薬科学専攻は2015年に追加されました。