山口 昌弘

東北大学 副学長（教育改革・国際戦略担当）
東北大学 高等大学院機構長

　東北大学は、文部科学省が認定する国際卓越研究大学の第1号となりました。高等大学院機構では、研究等体制強化計画に掲げた「世界に挑戦する学びの創造」を目標とし、様々な取り組みを進めてまいります。
　世界は今、経済・流通のグローバル化、情報通信・AIをはじめとする急速な技術革新、急激な社会変化や社会の分断が進行し、温暖化をはじめとする地球規模の問題が顕在化する新しい時代に突入しています。このような社会の変動が激しく、将来の予測が難しい複雑な時代に生きる若者に対して、多くの国で教育改革が進められている一方、国内に目を転じると、経済の長期低迷、少子高齢化、日本の国際的地位の低下が顕著です。大学においてもグローバル人材、イノベーション人材の育成が不十分であり、また、専門のタコつぼ化に象徴されるように研究・教育組織の硬直化が懸念されています。
　東北大学は、この状況を打破するため、学部や研究科の壁を越えた横断的な融合教育を行うことにより、世界を舞台に活躍する若手リーダーの育成に取り組んでおります。特に、東北大学の強みである研究を活かして、研究科に象徴される狭い学問領域の壁、国境の壁を超えた先進的かつ横断的な大学院教育プログラムである「学位プログラム」をさらに拡充していきます。本学が先駆的に推進してきた学際融合を目指す「学際高等研究教育院」、海外の有力大学と共同で人材育成を行う「国際共同大学院プログラム」、産学官と連携し、俯瞰力や独創力を持った人材育成を行う「産学共創大学院プログラム」「リーディングプログラム」などのプログラムを用意しています。
　高度専門人材を社会に輩出していくうえでは、様々な場面で応用可能となるトランスファラブルスキルの重要性が高まっています。専門性の発展だけでなく、各学生がトランスファラブルスキルを修得できるようなプログラムや研修の新規開発、そして研究科を横断して受講できる大学院共通科目など、多面的に展開しています。博士学生に対するキャリア開発支援も充実させることで、アカデミアや産業界への輩出も強化しています。また、博士学生が安心して研究生活を行えるよう、経済的不安を解消するために、本学独自の博士学生支援制度を構築しています。このように、高等大学院機構として様々な取り組みを実施していくことで、世界中から「学んでみたい」「研究してみたい」と目標にされる世界と伍する研究大学を目指しています。
　これらの取り組みは、学生の皆さんにとって、通常の研究科・専攻の学修に加え、様々な学修の機会が付加されます。しかし、これらの経験が、将来、皆さんがグローバルリーダーとして世界で活躍し、人類の持続可能社会の実現や社会のイノベーションの創出に繋げていくと期待しています。